解説付 臨床工学技士国家試験 第36回 午後:第65問

人工呼吸器関連肺炎(VAP)対策として正しいのはどれか。2つ選べ。

a: 約8時間ごとに口腔ケアを行う。

b: 人工呼吸器回路を毎日交換する。

c: 体動防止のため過鎮静にする。

d: 患者を仰臥位で管理する。

e: 人工呼吸器から離脱できるかどうか、毎日評価する。

人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)は、気管挿管下の人工呼吸患者に、人工呼吸開始48時間以降に新たに発生した肺炎で、重要なデバイス関連院内感染である。日本のICUでVAPは入院患者の3~4%、ICU内の院内感染で最も多い。起炎菌は発症する時期によって異なり、挿管後4日以内に発症した場合は耐性傾向の少ないインフルエンザ桿菌、肺炎球菌、メチシリン感性の黄色ブドウ球菌(MSSA)が起炎菌として多く、5日以降に発症する場合は、病院感染で問題となりやすい緑膿菌、アシネトバクター、メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌(MRSA)などが原因として多くなる。起炎菌の頻度は、黄色ブドウ球菌と緑膿菌が高い。
VAPを予防するためには、予防策を単独で行うのではなく、できる限り予防策をひとまとめにして行うと良いとされている。複数の予防策をひとまとめにして行うことをバンドリングという。VAPの予防はバンドリングを行うことで、31~57%もVAPの発症率を低下させることができるというデータがある。この予防バンドルには、次の予防策が挙げられている。
1.手指衛生を確実に実施する
2.人工呼吸器回路を頻回に交換しない
3.適切な鎮静・鎮痛をはかる。特に過鎮静を避ける。
4.人工呼吸器からの離脱ができるかどうか、毎日評価する
5.人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しない

a:正解。口腔内細菌は、口腔洗浄後8時間で元の細菌数に増殖するため、8時間ごとの口腔ケアが推奨されている。

b:頻回な人工呼吸器交換は感染の機械が増えるとされており、7日未満での交換は推奨されていない。

c:深鎮静管理では、人工呼吸器の離脱期間を遅らせ、VAPの発生頻度が増加するとされている。

d:仰臥位では、口腔内の分泌物が気管内に垂れ込みやすくなる。VAPを予防するためには、体位交換時に、側臥位や腹臥位にするようにする。また、経管栄養中は胃の内容物が逆流しないように、30~45度にギャッジアップすると良いが、通常時は口腔内の分泌物が垂れ込みやすくなるリスクもあるので、経管栄養を投与していない時は、ベッドの角度を調整するようにする。

e:正解。気管挿管期間を短縮するため、人工呼吸器からの離脱は毎日評価する。

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臨床工学技士 国家試験 過去問
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